事故車修理費の協定で、アジャスターから言われる言葉として「この損傷は鈑金で修理できませんか」または「交換ではなく鈑金が妥当でしょう」または「指数はマスキングが基本です」など、まるで修理方法の選択はアジャスターが決定できるかのような発言です。

確かに、鈑金で修理できる損傷はありますが、しかし、ここで考えなければならない問題があります。
それは、鈑金で修理できることと、自動車保険上の鈑金修理が妥当することは、本当に同じなのかということです。
つまり、自動車保険で問題になるのは、単に作業として鈑金ができるかどうかではなく、事故によって生じた損害を事故前の状態に回復するためにはどの修理方法と費用が必要であり、かつ合理的なのかということです。
ここの判断が大変重要な問題なのです。
したがって、「鈑金で作業できる」ということだけで「交換ではなく鈑金が妥当」と決まるわけではないという理解が大切です。
鈑金で修理できる損傷であっても、自動車保険の観点から見れば、交換が妥当する場合があるのです。
なぜなら、自動車保険は、修理工場が行った作業代をそのまま支払う制度ではなく、事故によって生じた損害を金銭として評価する制度だからです。
ここを理解しないと、協定はいつの間にか「できるか、できないか」の話になってしまいます。
しかし、本来の問題は、「できるか」ではなく、「その方法で、事故前の状態に損傷を回復するための損害額として妥当するのか」ということです。
仮に、アジャスターから「鈑金で修理できるので交換は認められません」と言われたときに、修理工場としてはそこで終わってはいけません。
そこで問い直すべきは、「鈑金で修理できるか」ではなく、「鈑金修理を前提とした損害額の評価で本当に足りるのか」という視点です。
結論として、鈑金で修理できる損傷であっても、自動車保険の観点に照らせば、交換が妥当する場合があり、それは、自動車保険で検討する修理方法そのものが、修理実務における作業の可否ではなく、損害の回復に必要かつ合理的な費用だからです。
この考え方を理解できるかどうかによって、事故車修理費協定の大きな分岐点があるといえるのです。
つまり、修理費の協定に必要なのは、技術的検討からの損害論の理解なのです。
